『はらぺこあおむし』が伝えたいこと。希望と成長の物語

『はらぺこあおむし』が伝えたいこと。 というタイトルのアイキャッチ画像

『はらぺこあおむし』が伝えたいことは何でしょうか。世界中で愛されるこの絵本の人気の理由や、作者が込めたねらい、そして魅力について知りたい方も多いと思います。

出版社である偕成社の情報や、ページ数、値段、読んだ人の感想も気になるところです。さらに、はらぺこあおむしの日がなぜ制定されたのか、その背景も含めて、この作品の奥深い世界をご紹介します。

シンプルな内容とあらすじの中に隠された深いメッセージ、そして全文を通して描かれる魅力と伝えたいことを探ります。また、この絵本は何歳向けなのか、対象年齢の理由や、特になぜ3歳から5歳におすすめの絵本とされるのか、おすすめのポイントを解説します。

この記事でわかること
  • 『はらぺこあおむし』が伝える「成長への希望」や「自然のサイクル」
  • 作者エリック・カールが絵本に込めた「ねらい」や「伝えたいこと」
  • 出版社の推奨対象年齢と、実際の読者層が異なる理由
  • 穴あき仕掛けや色彩が子どもに与える「達成感」と「魅力」
目次

『はらぺこあおむし』が伝えたいことの核心

はらぺこあおむしが卵から蝶になるまでの成長(ライフサイクル)を描いたイラスト
  • 成長することへの希望のメッセージ
  • 蝶になる「自然のサイクル」
  • 食べることと回復する力
  • 絵本に込められた作者の「ねらいは」
  • 作者エリック・カールが「伝えたいこと」

成長することへの希望のメッセージ

『はらぺこあおむし』が伝える最も力強いメッセージは、「成長することへの希望」です。

物語は、日曜日の朝に生まれた小さく、はらぺこだったあおむしが主人公です。あおむしは月曜日から毎日さまざまな食べ物を食べ、少しずつ大きくなっていきます。この日々成長していく姿は、子どもたち自身の姿と重なります。

小さな存在が、やがて大きくふとっちょになり、最後には美しい蝶へと変身する。この劇的な変化は、子どもたちに「自分もいつかこんなに大きく、美しくなれるんだ」という成長への期待と希望を抱かせます。

成長の喜びの象徴

あおむしが蝶になるという結末は、子どもがやがて成長して親元を離れていく姿のメタファー(比喩)とも解釈されています。絵本を通して、成長する喜びや生命の力強さを直感的に伝えています。

このように、あおむしの変身は、子どもたち自身の未来の可能性を肯定する、温かい応援のメッセージとなっているのです。

蝶になる「自然のサイクル」

『はらぺこあおむし』は、子どもたちに「自然のサイクルや生命の循環」を教える役割も担っています。

物語は「卵」から「ちっぽけなあおむし」が生まれるところから始まります。あおむしはたくさんの食べ物を食べて成長し、やがて「さなぎ」となって眠り、最後には「美しい蝶」となって飛び立っていきます。

この「卵 → 幼虫 → さなぎ → 成虫」という蝶の完全変態のプロセスは、まさしく生命の神秘そのものです。子どもたちは、このシンプルな物語を楽しみながら、知らず知らずのうちに「生き物は生まれ、成長し、姿を変えていく」という自然界の基本的なサイクルを学んでいます。

美しい蝶になるという結末は、生命が持つ可能性や素晴らしさを鮮やかに示しています。

食べることと回復する力

食べ過ぎてお腹を壊したあおむしと、葉っぱを食べて回復するあおむし

この絵本は、「食べることの大切さ」「失敗から立ち直る力」についても深く触れています。

あおむしは月曜日から金曜日まで、りんごや梨といった果物を食べて成長します。しかし、土曜日にはチョコレートケーキやアイスクリーム、ソーセージなど、多種多様な食べ物を食べ過ぎてお腹を壊してしまいます。

この描写は、子どもたちにバランスの取れた食事の大切さを示唆しています。好きなものばかり食べていると、体調を崩してしまうかもしれない、という教訓です。

しかし、物語はそこで終わりません。お腹を壊したあおむしは、次の日曜日に「みどりの はっぱ」を食べます。すると、お腹の調子はすっかり良くなります。

失敗と再生の物語

土曜日の食べ過ぎは「失敗」や「悪い食習慣」の象徴です。ですが、日曜日に適切な食べ物(緑の葉っぱ)を選び直すことで回復します。これは、たとえ失敗しても、そこから学び、立ち直ることができるという重要なメッセージを伝えています。

この「失敗から立ち直る力」の描写は、子どもたちに安心感と、前向きに進むことの重要性を教えてくれます。

絵本に込められた作者の「ねらいは」

『はらぺこあおむし』に込められた作者の「ねらいは」、単なる蝶の生態学習だけではありません。楽しみながら自然に学べる、いくつかの教育的な要素が盛り込まれています。

1. 食べ物と健康への理解

あおむしが食べたもので体が作られ、食べ過ぎればお腹を壊すという描写です。これは、「何を食べたらどうなるか」という、食と健康の基本的な関係性を子どもたちに伝えます。自分の身の丈に合わないものを欲張るとどうなるか、という人生の教訓として読み取ることも可能です。

2. 自然のサイクルへの興味

前述の通り、あおむしが蝶へと成長する過程を通して、生命の変化や自然界のサイクルについて楽しく学べるよう意図されています。失敗を糧にして成長する姿は、子どもに夢を与えます。

3. 曜日と数字の概念

「月曜日にはりんごをひとつ」「火曜日にはなしをふたつ」といったように、物語は曜日と数字の概念を含んで進みます。子どもたちは絵本を読み聞かせてもらううちに、自然と曜日や数の感覚をインプットできます。歌(『はらぺこあおむしのうた』)と合わせることで、アウトプットにも繋がります。

作品情報(通常版)

ここで、絵本の基本的な情報を表にまとめます。

項目詳細
作・絵エリック・カール (Eric Carle)
もり ひさし
出版社偕成社
日本初版1976年5月
ページ数26ページ
値段(通常版)1,320円(税込) ※2025年時点
ISBN978-4-03-328010-3

※値段や仕様は、ボードブック版やビッグブック版など、版によって異なります。

作者エリック・カールが「伝えたいこと」

作者のエリック・カール氏は、この絵本にどのような想いを込めたのでしょうか。彼が子どもたちに「伝えたいこと」は、その制作背景に隠されています。

本と遊びの「橋渡し」

エリック・カール氏は、自身の絵本を「おもちゃと本をミックスしたもの」と語っています。子どもたちがまずおもちゃで遊び、その後に本で学ぶことを覚える過程において、自身の絵本が「橋渡し役」になることを願っていました。 『はらぺこあおむし』の穴の開いた仕掛けは、まさにその思想の表れです。

色彩を通じた「生きる喜び」

エリック・カール氏は、幼少期を戦時下のドイツで過ごしました。当時のドイツは色彩がなく、すべてがグレーに塗られているような世界だったと回想しています。その経験から、彼の作品は鮮やかな色彩に満ちています。この色彩は、彼にとっての自由や平和のシンボルであり、「生命力」や「生きることの喜び」を表現しています。

エリック・カール氏の「私の人生には、いろいろなことがありました。私の本が皆さんの喜びになり、学びになり、成長の助けとなることを願っています」という言葉は、彼が絵本に込めた深い愛情と希望を物語っています。

また、この絵本は当初、穴あきやページサイズの異なる複雑な造本からアメリカでの制作を断られ続けました。しかし、日本の印刷製本会社(偕成社)がそのこだわりを実現し、1969年の初版(英語版)は日本で印刷・製本されました。(日本語版は1976年刊行)

『はらぺこあおむし』が伝えたいことと絵本の魅力

  • 絵本は「何歳向け」に描かれている?
  • なぜ「3歳から5歳におすすめの絵本」か
  • 穴の仕掛けが子どもに与える体験
  • 「はらぺこあおむしの日」はなぜある?
  • まとめ:『はらぺこあおむし』が伝えたいこと

絵本は「何歳向け」に描かれている?

ソファで『はらぺこあおむし』の絵本を読む母親と3人の子どもたち

『はらぺこあおむし』の対象年齢について、出版社の見解と実際の読者層には少し違いがあります。

結論から言うと、出版社(偕成社)による対象年齢は「4歳~」とされています。しかし、実際には「0歳、1歳、2歳、3歳、4歳向け」と言えるほど、幅広い年齢の子どもたちに楽しまれています。

出版社の推奨が4歳からとなっている主な理由は、物語の中に「月曜日」「火曜日」といった曜日の概念が含まれているためです。曜日を正確に理解し始めるのが、一般的に4歳頃とされるため、このように設定されています。

「4歳から」は理解の目安

あくまで「物語の全ての要素(曜日や数字)を理解できる目安」が4歳ということです。4歳未満の子どもが楽しめないという意味では決してありません。

実際には、その鮮やかな色彩とシンプルなストーリー、そして穴の開いた仕掛けにより、0歳後半や1歳頃からじゅうぶん楽しむことができます。このため、破れにくく安全な「ボードブック版」がファーストブックとして非常に人気です。

なぜ「3歳から5歳におすすめの絵本」か

では、なぜ特に「3歳から5歳におすすめの絵本」として紹介されることが多いのでしょうか。これは、この年齢の子どもたちの発達段階に、絵本の持つ魅力が完璧に合致するためです。

1. 物語への没入(3歳頃~)

3歳頃になると、単なる絵や仕掛けだけでなく、「物語」そのものを楽しめるようになります。あおむしが食べ過ぎてお腹を痛がる場面では心配し、最後に美しい蝶になる場面では一緒に喜ぶといった、感情移入が可能になります。

2. 知的好奇心の高まり(4歳頃~)

4歳頃には、曜日の概念や「ひとつ、ふたつ」という数の概念を理解し始めます。絵本を読みながら「月曜日は何をたい?」と問いかけたり、一緒に数を数えたりすることで、知的な学びの楽しさを体験できます。

3. 「自分」との同一視(5歳頃~)

5歳頃になると、あおむしが成長し、やがて蝶になって飛び立っていく姿を、「自分自身の成長」と重ね合わせて捉えることができるようになります。「大きくなること」への期待や希望を、より深く感じ取れる年齢です。

このように、3歳から5歳は、『はらぺこあおむし』の持つ「遊びの要素」と「学びの要素」、そして「物語の深いテーマ」を、年齢に応じた深さで余すことなく吸収できる時期だと言えます。

穴の仕掛けが子どもに与える体験

はらぺこあおむし』のりんごのページの穴に指を入れる子ども

『はらぺこあおむし』の最大の魅力の一つが、ページに開けられた「穴の仕掛け」です。

この穴は、あおむしが食べた跡を示しています。子どもたちは、この穴に自分の指を入れたくてたまらなくなります。りんごの穴、なしの穴、すももの穴…と、指を次々に入れていく行為は、子どもたちにとって単なる遊び以上の意味を持ちます。

それは、「達成感」や「成功体験」です。

自分の指が主人公のあおむしになりきり、食べ物の穴を通り抜ける。このシンプルな行為が、「自分でできた!」という満足感を与えます。指を奥まで進め、次のページをめくることで「貫通できた」と感じる快感は、子どもたちの本能的な好奇心を満たします。

「読む」から「遊ぶ」へ

この仕掛けにより、『はらぺこあおむし』は、ただ大人が「読む」だけの絵本ではなく、子どもが自ら「遊ぶ」ことのできる絵本になっています。この主体的な体験が、子どもたちの本への愛着を育みます。

もちろん、この仕掛けがあるために、絵本はヨレヨレになったり、時には破れてしまったりすることもあります。しかし、それは子どもが夢中になって遊んだ「勲章」とも言えるでしょう。

「はらぺこあおむしの日」はなぜある?

『はらぺこあおむし』には、公式な記念日があることをご存知でしょうか。それは「3月20日」です。

この記念日は、2026年に『はらぺこあおむし』が日本で出版されてから50周年を迎えることを記念し、2025年に一般社団法人・日本記念日協会によって認定・登録されました。

では、なぜ3月20日なのでしょうか。

その理由は、3月20日が「春分の日」となることが多いためです。物語の最後、あおむしがさまざまな経験を経て美しい蝶へと変身し、飛び立っていく姿。これが、厳しい冬を越えて訪れる「春の到来の喜び」のイメージと重なることから、この日が選ばれました。

記念日の目的

この記念日には、以下の目的が込められています。

  • 絵本とキャラクターの魅力をさらに広めること
  • 読書の大切さや、そこから得られる教育的・芸術的価値を再認識してもらうこと

(参照:雑学ネタ帳、PLAY! PARK ERIC CARLE公式サイト ほか)

まとめ:『はらぺこあおむし』が伝えたいこと

『はらぺこあおむし』が世代を超えて愛され続ける理由と、作品に込められた深いメッセージについて解説しました。最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 『はらぺこあomushi』が最も伝えたいことは「成長することへの希望」である
  • あおむしが蝶になる姿は子どもの成長への期待を育む
  • 卵から蝶への変身は「自然のサイクル」や「生命の神秘」を教える
  • 土曜に食べ過ぎてお腹を壊す描写は「食のバランス」の大切さを示す
  • 日曜に葉っぱで回復する姿は「失敗から立ち直る力」を象徴する
  • 作者の「ねらいは」食育、自然科学、数字や曜日の学習にある
  • 作者エリック・カールは「おもちゃと本をミックスしたい」と願っていた
  • 鮮やかな色彩は、作者の幼少期(戦時下のドイツ)の経験が背景にある
  • 色彩は「生命力」や「生きる喜び」の象徴である
  • 出版社の推奨対象年齢は「4歳~」(曜日の理解が目安)
  • 実際は0歳からでも色彩や仕掛けで楽しめるためファーストブックに人気
  • 特に「3歳から5歳」は物語、学び、テーマを深く吸収できる時期である
  • 「穴の仕掛け」は子どもに「達成感」や「成功体験」を与える
  • 「はらぺこあおむしの日」は3月20日に制定されている
  • 日付は春分の日にあたり、蝶になる「春の到来の喜び」と重なるためである

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記事内容から想定されるQ&A

Q: 『はらぺこあおむし』が一番伝えたいことは何ですか?
A: 小さなあおむしが美しい蝶になる姿を通して、「成長することへの希望」や「生命の力強さ」を伝えています。

Q: 作者のエリック・カールさんが絵本に込めた「ねらい」は何ですか?
A: 曜日や数字、食べ物と健康の関係などを、子どもが絵本で遊びながら自然に学べるようにすることです。

Q: 土曜日に食べ過ぎてお腹を壊す場面には、どんな意味がありますか? A: バランスの悪い食事という「失敗」と、日曜日に葉っぱで回復する「立ち直る力」の大切さを示しています。

Q: この絵本の対象年齢は、公式には何歳向けですか?
A: 出版社(偕成社)は、曜日の概念を理解し始める年齢として「4歳から」を推奨しています。

Q: 実際には何歳頃から楽しめますか?
A: 鮮やかな色彩と穴の仕掛けで、0歳や1歳頃からでも楽しめ、ファーストブックとしても人気があります。

Q: なぜ特に3歳から5歳におすすめなのですか?
A: 物語に感情移入し、数の概念を学び、自身の成長と重ね合わせるなど、発達段階に最適だからです。

Q: ページに開いている「穴」の仕掛けには、どんな効果がありますか?
A: 子どもが指を入れて遊ぶことで、「自分でできた」という達成感や成功体験を得られる効果があります。

Q: エリック・カールさんの作品がカラフルなのはなぜですか?
A: 戦時下の色彩のないドイツで育った経験から、「生きる喜び」や「生命力」を鮮やかな色で表現したためです。

Q: 「はらぺこあおむしの日」はいつですか?
A: 3月20日です。あおむしが蝶になる姿が、春の訪れの喜びと重なることから制定されました。

Q: この絵本の初版は、日本で作られたというのは本当ですか?
A: はい。1969年の英語版初版は、複雑な仕掛けのためアメリカで製造できず、日本の会社が印刷・製本しました。

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